中村隆英『家計簿からみた近代日本生活史』(東京:東京大学出版会、1993)
家計簿というものは、私自身の家ではつけていないけれども、私の母親はつけていた。年末の婦人雑誌(たぶん『主婦の友』だと思う)の付録で、母親がいつも読んでいる婦人雑誌とは違った外見のけばけばしい雑誌が一年に一号だけ家に現れることになった。所々に短歌が書き込まれていたと思う。写真を貼ったアルバムが一つの世帯の表向きの顔だとしたら、家計簿というのはその顔のうしろにある骨格や支えのようなもので、とても大切な資料である。この書物は、著名な経済史の学者がお茶の水大学の家政科に移動した先の仕事である。明治から高度成長期以降までの期間について、比較的長期にわたる分析ができる家計簿を25の世帯分集めて、それぞれの世帯について収入や支出などを分析したものである。医療費は保健衛生などの枠組みに入っていて、収入や支出なども分かるから、きちんと分析できれば何か意味があるデータが出てくるだろう。