佐藤浩章編『大学教員のための授業方法とデザイン』(東京:玉川大学出版部、2010)
学者・大学の先生向けのビジネス書で、私はビジネス書を読んだときの、虚偽の明るい希望に満ちた感覚が好きだから(お酒を飲んだときの気持ちに似ていませんか?)、この本もとても楽しく読んだ。
シラバスをわかりやすく書き、一回ごとの講義を合理的に設計し、学期全体の構成の中の位置を明示し、授業のはじめに学生と椅子取りゲームをやって仲良くなると、素晴らしい講義を作ることができるかのように書いてある。
もちろん、それこそが優れた講義の本質であると誰もが知っている、「自らがすぐれた学者であり、その問題を深く理解していること」が必要であるなんて、どこにも書いていない。そして、それを書かないことこそが、学者向けのビジネス書やマニュアル本のキモなのだろうなと思う。講義を作るマニュアルというのは、私は見よう見まねでやっているけれども、きっといい本を一冊探して、それに従うべきだと思う。しかし、うまく説明できなかったときには、それをマニュアルで解決するのではなく、この問題を自分はずっと知っていたかのようなふりをして、そう思っていたけれども、実は正確に深く理解できていなかった、自分の人生はすべてそうではないか、言われてみれば、私が好きな精神病院のカルテに記載された患者の台詞に「私はずっと詐欺師だった」(I have been an imposter all my life)のがあったが、その言葉は私を狙い撃ちにしたのではないかという深い自己嫌悪に陥るのが正しい方法だと私は信じている。
その回のキーワードを書きだしておいて提示するというのは、これはいいと思う。さっそく来年度からやってみよう。