三浦岱栄「精神医学と宗教」内村裕之・笠松章・島崎俊樹『精神医学最近の進歩』(東京:医歯薬出版株式会社、1957), 67-78.
必要があって、1957年に出版された「精神医学最近の進歩」という本を眺めていたら、その中に三浦岱栄が書いた「精神医学と宗教」という文章があって、面白かった。
必要があって、1957年に出版された「精神医学最近の進歩」という本を眺めていたら、その中に三浦岱栄が書いた「精神医学と宗教」という文章があって、面白かった。
三浦は1950年代から60年代にかけて慶應の精神科の教授であった。昔の精神科の教授らしく、碩学で多様な知的活動をしており、クロード・ベルナール『実験医学序説』の訳者でもあった。三浦はカトリックで、宗教と精神医学の問題には深い関心を持っており、三浦個人の宗教的な信仰と精神医学者としての信念を、同時代の精神医学・宗教に関連させて語っているのがこの小文である。
日本の精神医学では、森田正馬を除いては宗教についての本格的な論考はないが、欧米では大きな主題になってきた。その理由として、二つの点に三浦は着目する。第一には、20世紀に入ってから、精神医学自体がその性質を大きく変えて、記述的なもの・身体的なものから、心理と社会・文化が関係するありさまの中に精神病を位置づけるダイナミックなものになったこと。もう一つは、現代において既成宗教の衰退が衰退し、その空隙を埋めるように現れるようになった新興宗教が、精神病や神経症の原因となり、その治療にもなっているという状況である。