Hodge, Adam R., “Pestilence and Power: The Smallpox Epidemic of 1780-1782 and Intertribal Relations on the Northern Great Plains”, The Historian, 72(2010), 543-567.
同じく1780-82年の天然痘の流行を扱った論文。こちらは、先の論文でも触れられていた、アメリカ先住民の部族ごとに死亡率やダメージが違ったことに注目して、この天然痘の流行が先住民の部族間の対立の構造を変えたこと、それまで馬と銃を得て攻勢をかけていたが、いまだ半定住の部族に阻まれていたスー族 (Sioux)が優勢になったこと、それまで発展していた半定住の部族がスー族に支配されていくようになった過程を論じている。
同じく1780-82年の天然痘の流行を扱った論文。こちらは、先の論文でも触れられていた、アメリカ先住民の部族ごとに死亡率やダメージが違ったことに注目して、この天然痘の流行が先住民の部族間の対立の構造を変えたこと、それまで馬と銃を得て攻勢をかけていたが、いまだ半定住の部族に阻まれていたスー族 (Sioux)が優勢になったこと、それまで発展していた半定住の部族がスー族に支配されていくようになった過程を論じている。
免疫からみたヨーロッパ人と先住民という二元論の中では、「先住民」という形で単一に扱われてきていた先住民の中に、被害が大きかった部族とそうでない部族という形で差異を作り、その歴史を描くことに成功している、素晴らしい象徴的な意味を持った仕事であると思う。もし、戦国時代の日本を「日本人は極東の地で殺し合いをしていた」とだけ書いた歴史書から、武田とか上杉とかいう大名を特定していったようなものである。ただ、それが語っている歴史のコアの部分は、天然痘によるダメージが部族によって違ったというシンプルなストーリーで、もう少し色々な要素を複合的に分析したほうがよかったように思う。