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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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イギリスにおける心理療法の形成

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Jones, Edgar, “War and the Practice of Psychotherapy: The UK Experience 1939-1960”, Medical History, 48(2004), 493-510.
イングランドの心理療法の制度的形成の話。心理療法の歴史というのは、心理学者や心理療法の専門家たち、あるいは心理療法に肩入れしている精神科の医者たちが、パルチザン的な歴史を描くことが多く、スタンスの取り方が難しい主題である。この論文は、伝統的な説明を批判するというスタイルだけれども、何が修正点なのか、よく分からなかった。

伝統的な説明によれば、心理療法が確立したのは、第二次世界大戦に求められるという。戦場で神経症を発症した患者が後方に送られて、彼らを研究することで病理的な理解が進んだが、それだけでなく、彼らに対して心理療法を行う体制が作られた。第一次世界大戦はたしかに「シェルショック」を発見せしめたが、その後の心理療法というのは、すぐに衰退した。年金省のクリニックはすぐに閉鎖された。私立の診療は存在したが、たとえばアーネスト・ジョーンズの心理療法は、裕福な少数派へのサービスであり、公衆、教会、医者、精神科医、マスコミには敵視されていた。しかし、第二次大戦中に、軍の肝いりで、精神異常のために後方に送られた兵士に心理療法をほどこすメカニズムが軍の医療施設の中に組み込まれ、それが戦後の組織に受け継がれたと言われている。

しかし、戦争中の心理療法は、記録が伝えるほど効果は挙げなかったであろう。注意しなければならないのは、これらの多くが、戦争中の常として、その効果が誇張されて描かれていることである。むしろ、戦後になってみると、心理療法に対する過度な期待があったといってもよい。

戦争中に神経症にかかった兵士の改善についての戦時の記述にはプロパガンダと歪みが加わるというのは憶えなければならない細かい注意点だと思う。でも、私には、伝統的な説明のほうがまだ腑に落ちるのだけれども。

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