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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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『ジョー・ブラックをよろしく』

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『ジョー・ブラックをよろしく』をDVDで観る。これは1998年の映画で、公開されたころに私も観たけれども、当時は、ブラッド・ピットはまだ若手に分類できる俳優だった。「ファンタジー・ロマンス」で、メディア王のビル、その娘のスーザン、そして死神の三人が主人公。アンソニー・ホプキンズがビルを、プラッド・ピットが死神を演じている。スーザンを演じたのは、クレア・フォルラーニというイギリスの女優さんで、メリル・ストリープを思わせる面長で知的な感じの女優さんだった。ビルを「連れに来た」死神が、その娘のスーザンに恋をしてしまうというストーリーである。

マルコム・ニコルソンという医学史の学者が、この映画の解釈について面白いことを書いていた。この映画の中の死神が、恐怖を覚えさせる役ではなく、しかもブラッド・ピットが演じているということに注目して、「死」のイメージが変化してきているという。かつての絶対的な異世界から来る恐ろしい「死」(Death) ではなくなり、この世の中にまじりあって、部分的にはこの世の存在にすらなったということである。この変化は、脳死に象徴されるように、死と生があいまいな形で混在するかのようになったことと関係があるという流れだった。映画を観て、この解釈に半分だけ説得された。話は分かるけれども、それがコメディのキモであって、そこに多くを読み込むべきだろうかというのが、正直な印象である。

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