井上俊宏『近代日本の精神医学と法』(東京:ぎょうせい、2010)
精神科医が東大駒場の哲学の大学院で書いた修士論文を書籍化したものである。修士論文であるから決して新しい史実を発見したり新しい議論を組み立てたリサーチをしているわけではないが、出色の分かりやすさでまとめられた好著である。日本の精神医療がたどってきた経路について批判的な姿勢を保ち、どこがどのように問題だったのかということについての教科書的な優れた記述である。フーコーの権力論や生政治を解説して、それを通じて精神科医療の拡大を説明している一節が挿入されており、その部分が全体から浮いていることが欠点と言えば欠点で、それ以外は安心して読める一冊である。短いので標準的な教科書にもなる。
精神科医が東大駒場の哲学の大学院で書いた修士論文を書籍化したものである。修士論文であるから決して新しい史実を発見したり新しい議論を組み立てたリサーチをしているわけではないが、出色の分かりやすさでまとめられた好著である。日本の精神医療がたどってきた経路について批判的な姿勢を保ち、どこがどのように問題だったのかということについての教科書的な優れた記述である。フーコーの権力論や生政治を解説して、それを通じて精神科医療の拡大を説明している一節が挿入されており、その部分が全体から浮いていることが欠点と言えば欠点で、それ以外は安心して読める一冊である。短いので標準的な教科書にもなる。