井村恒郎「都市と農村における神経症の比較調査」『精神衛生研究』vol.2, 1954-2: 21-29.
国府台の精神衛生研究所の井村と、群馬大学の精神科のチームが協力して行った、都市部と地方部における神経症の比較である。国府台病院と群馬大の外来の二つの組織をベースにして、大都市の患者と純農村の患者をそれぞれ224名と190名だけ選び出して、二つのグループの比較調査を行ったものである。大都市といっても、国府台の立地上、東京の東側の戦災地に居住しているものがメインとなり、ここは戦災地で人口移動が激しく、経済的にも不安定な、中層以下のものが多く、その中でも国府台で受診するものは、生活程度が低いものが多い。
神経質・神経衰弱が農村に多い
不安神経症が都市に多い
ヒステリーは農村に少なく都市に多い
農村と都市は特に女子において異なり、男子には有意の差はない
不安神経症が都市に多い
ヒステリーは農村に少なく都市に多い
農村と都市は特に女子において異なり、男子には有意の差はない
不安発作のような急性の不安は都市の家婦に多く、近代社会では増加する。都市の家婦にヒステリーが多いことは、戦後のこの地域の生活が、社会的・経済的に不安定であり、道徳、習慣の拘束力が弱いことと関係が深い。
ヒステリーと神経症の比について。彼らがH/N比と呼ぶ指標があり、これが、戦中の市民、戦時神経症の兵士、そして今回の研究と、連続して使われている。今回のH/Nは、都市部では55.9. 農村部では19.1 であった。この55.9という数字は、H/N比としては、戦争末期の東大病院の外来が示した高い数値となる。ちなみに、戦争中の陸軍では100-264という異様に高い数値を示した。