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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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医学と文学

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Charon, Rita, Narrative Medicine: Honoring the Stories of Illness (Oxford: Oxford University Press, 2006).
Hawkins, Anne Hunsaker, “The Idea of Character”, in Rita Charon and Martha Montello eds., Stories Matter: the Role of Narrative in Medical Ethics (New York: Routledge, 2002), 69-76.
必要があって、手持ちの「医学と文学」系の本にさっと目を通す。

医療人文学 medical humanities の中には、いくつかの区分けがあって、医学史、医療人類学、医療倫理学などのほかに、「医学と文学」や「医学とナラティヴ」などの問題を主として取り扱う一群の人々がいる。他の区分けが、歴史・人類学・倫理学といった、それぞれアカデミックなトレーニングの体系を持っているのに対し、この領域は、批評理論などを使いテキストをきちんと読むプロの文学研究者もいるけれども、自分の診療や患者との出会いなどの物語的構造などについて語る医者も多いという特徴を持っている。良きにつけ悪しきにつけ「文学」や「物語」というものが、一番敷居が低くて、現場の医者がとっつきやすいということを象徴している。

私はこの主題に興味はあるけれども、こう、主題としてまとまりがつかなくなっているという印象がある。特に、その第一人者のリタ・シャロンが言うことがおかしい。20世紀の後半に、医者の自立性が失われ、臨床が歪んだものになってきており、医療が「ナラティヴ」の側面を持っていることが、それを正すだろうという発想そのものはいいだろう。しかし、保険と行政によって硬直した臨床の問題をただすこと、あるいは健康の商品化によって受動的なものにされた医療職の自立性を回復すること、発展途上国における不健康の問題などを解決すること、これらの問題が「ナラティヴ医療」がもたらすヴァイタリティによって希望が見えるかのように書いているのは、NBMの可能性というよりも限界や孤立をさらけだしている。

この論文集の中に、ソリッドな文学研究の訓練をうけたホーキンズが面白い論文を書いていた。冒頭、がんの患者に治験の新薬を投与する合意書にサインさせる医者たちのエピソードを語ったあとで、このエピソードは、実は自分が作ったものであり、ソポクレースの『フィロクテテス』になぞらえた話を現代医療を舞台にして創作したものであるという形式で論じていた。なんておしゃれな(笑)

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