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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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ウェルカム博物館『脳』

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ウェルカム博物館『私たちが脳にしたこと』

ウェルカム博物館の新しい展示 Brains のサイトのイメージ・ギャラリーをゆっくりとみる。いつものように素晴らしく高い水準の展示にため息が出る。
http://www.wellcomecollection.org/whats-on/exhibitions/brains.aspx

ゴルトンが頭蓋骨を測った器具。1825年に作られた小頭症の白痴の石膏像に骨相学の図式が描かれたもの。20世紀初に「骨相学のリバイバル」で刊行されたものにいくつか面白いものがあった、ラファエルの頭蓋骨、売春婦の頭蓋骨、チャールズ・バベッジが遺言で寄贈した自らの脳、女権擁護者であり、男性と女性の脳は違うかという論争にもかかわった Helen Hamilton Gardner の脳(どうやって手に入ったんだろう?)、1900年くらいに発掘された、前2010年くらいのエジプトの脳のミイラは、普通は脳を重視なかったエジプトでは例外的な発見で、我々が持っている最古の脳全体の標本だという。

医学関係では、人種平等主義者が描いた黒人の脳(1908)、19世紀から20世紀にかけての医学書における脳の解剖図もいくつかあり、どれもインパクトがあった。頭蓋骨をあけて行う手術について、前2000年ほどの頭蓋骨で頭に穴が4つほどあけられていたもの、18世紀の美しい手術のセット、そしてイェール大学の現代の手術の写真を三つ並べたところが素晴らしかった。19世紀後半には有名な蝋模型の作成者がいたそうで、彼の作品もいくつかあった。医学生用もあり、これは一般向けに作られたのではないかと推察されているものもあった。

一つ気が付いたことは、国内の医学史コレクションや海外のコレクションから魅力的な展示物を借りてくるということである。国際的な美術館のように、医学史の展示において世界的なネットワークが作られて、より大がかりなグローバル産業になっているということだと思う。出版された大きな書物においても、すでに、グローバルな枠組みで仕事が行われているものに触れている。いま、日本語訳の話が検討されているダウン症の歴史の書物は、優れてアカデミックな研究者が書き下ろしたものだが、最初からグローバルな書物にしようとして、各国の研究者にコンタクトをとり、助手を雇用してリサーチをさせてから執筆していた。はしゃぐ必要も焦る必要もなく、落ち着いて仕事をしていればいいのだけれども、その落ち着きとともに、世界ではこのようなグローバルな戦略が進んでいるのだということを意識して、その流れの中で仕事をすべきだと思う。

画像は、バベッジの脳。 この、コンピューターの創始者といわれている人物の脳をじっと見ると、私たちはキリストの心臓や聖遺物を見たときのキリスト教徒のような気分になるのだろうか。それが聖遺物と同じかどうかわからないが、たしかに、不思議な気持ちが起きてくる。

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