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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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『日本八景』

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幸田露伴・吉田絃二郎・河東碧梧桐・田山花袋・北原白秋・高浜虚子・菊地幽芳・泉鏡花『日本八景』岡田喜秋解説(東京:平凡社、2005)
昭和2年に、東京日日新聞、大阪毎日新聞の東西の二大新聞社が、日本を代表する風景を選ぶこととなった。鉄道省の後援を得て、全国からの投票で決するという大がかりな企画である。総数で9320万枚の官製はがきによる投票があったというから、巨大な規模である。むろん、地元に観光客を呼び寄せたりお国自慢のための組織票も多くあった。風景は、山岳、渓谷、河川、温泉、湖沼、海岸に、瀑布、平原を加えた8つのジャンルから一つずつ選ばれて「八景」となり、次点以下3景を「25勝」とした。さらに、この魅力を伝えるために、著名な文人8人に選ばれた地を遊覧して紀行文を書かせた。この作者と八景の組み合わせは次のようになっている。

幸田露伴  華厳の滝
吉田絃二郎 上高地
河東碧梧桐 狩勝峠
田山花袋  室戸岬
北原白秋  木曽川
高浜虚子  別府温泉
菊地幽芳  雲仙岳
泉鏡花   十和田湖

当代一流の文人で、50代を中心とする脂の乗り切った時期であり、しかも国民的な大規模な企画に書いた紀行文だから、どれもとても面白くて読みごたえがある。私個人の好みを言うと、露伴が最もよく、次は鏡花だと思う。

この「八景」の中で、私が行ったことがあるのは狩勝峠だけである。子供が小さかったときに、冬のスキーや夏の休暇でよくサホロのリゾート施設に行った。サホロ岳や、そのふもとの新得村のことなどが書いてあった。現在ではサホロ岳はリゾート、キャンプ、ゴルフ場、熊に会えるベアーマウンテンなどが林立し、新得は蕎麦で有名だけれども、当時はミモザの原生林に野生のスズランが広がる原野で、「兎の遊ぶお伽の国、熊の踊る夢の世界」だったとのこと。アメリカで綿羊の牧畜を学んできた業者が羊の放牧を始めて、その場所を「羊が丘」と名付けたりしている。これが、有名なジンギスカン料理の始まりなのかな。

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