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Channel: 身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
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優生学的精神医学の講演会(1932?)

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小関光尚『遺伝の話』精神衛生パンフレット第4号(1932)
精神衛生協会は遺伝と優生学の啓蒙活動に力を入れており、この大阪支部の発会講演で行った話は、精神病の遺伝について話したものである。小関は中宮病院の院長だが、その話は軽妙なものだったらしく、たとえば東郷元帥のような偉い人と下田歌子のような才媛をかけあわせたとすると、「どんな子供ができるかということは、これは不可能であります」(笑声)のように、随所で笑いを取っている。その中で、「強姦はたいてい[頭が]足りない人間がやっております。最も賢ければ、左様な下手な方法を採らないでも、もっといい方法があります」(笑声)というのは、えげつない(笑)の取り方で、現在なら間違いなく撤回謝罪だろう。

基本的な主張は、精神病は遺伝するというものであり、特に父方と母方から重積すると恐ろしいというものである。ポイントは、これを議論する過程で、精神病患者を含む家系の家系図が作られて、その中に含まれている重度の精神病ではない状態が精神病の子供を作る危険があるものになっていることである。当時の言葉でいう分裂病、癲癇、躁鬱病のような精神病だけでなく、ヒステリー、異常気質、神経質、酒客など、医学的にはきわめてあいまいな診断名が精神病の系譜の主役を占めていることである。「自殺」というのは、確かにそれ自体は明確な現象だが、その原因が精神異常だとすると、それもきわめてあいまいな概念になる。「姦通」もよく出ているが、これはもともとは秘密に行われていたことだが、明らかになると、火のように明らかになる。つまり、性格がちょっと人と調和的でないこと、人々との衝突、仕事上の不出来、飲酒による問題、姦通という格好の週刊誌的話題、そして自殺などといった、日常生活の中の事故を構成する要素が、精神病を優生学的に予防することの中に入ってくる。この過程が、かつては他者であり異なった要素であった精神病が、自分の生活の中に入ってくる、それも自分の家系の「血」の中に入ってくる仕掛けだった。

それから、もうひとつが、小関は、当時の日本人は、精神病の遺伝を気にかけずに結婚するという主張していることである。財産の多寡と容貌という表面的なことで決めている。実際、小関が知っている金持ちの家の白痴のもとに。それを承知で嫁入りして、子供がすべて異常児ということになっているケースもある。人々は見かけや些末のことばかりに夢中になり、真に重要な健康と身体に注意を払わないという内容の教えは、医者という職業が洋の東西を問わず天地開闢以来にわたって主張していることであり、小関がいうところの、人々が精神病の遺伝に注意を向けないということが現実なのか、そして小関たち優生主義者の活動はどの程度人々の意識と行動を変えたのか、まだ分からない。しかし、確かなことは、この段階のこの講演では、結婚相手の選択が優生学の手段であって、断種ではなかったということである。

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