『ナショナル・ジオグラフィック』日本版2012年6月号より
九州地方の山中において、樟脳(カンフル)を精製する方法を示した写真である。樟脳は台湾に原生するクスノキを原料にして生産される重要な製品であった。私は主に「カンフル」と呼称された薬剤の原料として知っていたが、この記事によるとセルロイドの原料として重要だったらしい。
1948年の『最新医薬品類聚』によれば、生理学的にその機能が研究されてきた薬剤であることがわかる。中枢神経系、特に延髄の呼吸中枢を刺激して呼吸を増大するほか、血管運動中枢を刺激して血圧を高め、脊髄の発汗中枢を刺激する。その他、特に重要だったのは強心作用であり、そのメカニズムは複雑であるが、朝比奈泰彦が解明した。いわゆる「カンフル注射」という言葉のもとになった薬剤である。